計装Cube6 ハンディ型HMIがモノ作りを変える〜ユビキタス計装と“e-工場”

東京大学大学院 新 誠一
2002年9月

キーワード「モバイル/ユビキタス/総論」

1.はじめに

PHSや携帯電話,そしてPDAを利用したHMI(Human Machine Interface)機器がようやく出まわり始めてきた1)。これらはハンディ型HMIと呼ぶのが適切だと思う。このトレンドを小型化という軸でとらえたものをユビキタス計装と命名した2)。ここでは,ハンディ型HMIを第一世代,ポータブル計装を第二世代,そして,マイクロケミカルプラントを第三世代と分類した。本解説では視点を変え,人と機械の協調を軸にしてハンディ型HMIを掘り下げていこう。

人は動き回るものである。だから,人に情報を掲示したり,人に操作をさせるためにはハンディが必須である。今や汎用の世界ではパソコン,PDA,携帯電話とモバイルは常識となっている。これまでの工場では機械に人を張り付けてきた。計器室と呼ばれる特別な場所または機械に設置された操作盤を通してしか,操業情報の所得や操業の指示を与えることができなかった。しかし,モバイルという汎用技術を工場に持ちこむことで,人に機械を張り付けることができるようになってきた。人と一緒に移動し,人が見たいとき,指示したいときに,その場で操作できるようになった。これが,ハンディ型HMIであり,人と機械の協調の実現の手段の一つである。それだけにハンディ型HMIに注目が集まるのは当然である。

もっとも,私が,このような機器を提案したのは1995年である3,4)。それから,単発的な製品提案がされてきたが,2000年代になって,ようやくハンディ型HMIが当たり前に使われる状況になってきた。ここまで時間がかかったのは,汎用技術を工場に導入する際の抵抗感や10年以上にわたって続く不況で設備投資が冷え込んだことが大きな原因である。それに加えて,自動化というトレンドもハンディHMI導入の遅れに大きな影響を与えたのだろう。

このトレンドは,1980年代のプラザ合意による円高進行以来顕著になったコストダウンの切り札であった。ここでの自動化とは無人化を目指してきた。つまり,人の利便性追及は目的とはしていなかった。高品質の製品を低コスト生産するという意味で,この自動化は20世紀末に大きな成功を治めてた。しかしながら,21世紀に入ると無人化による低コスト大量生産方式は日本では行き詰まりを露呈した。なぜなら,無人であれば,人の技量に依存しない。それなら,コストの低い国で作れば良いという空洞化の流れを引き起こした。

日本国内で生産する理由の一つが日本人の高度な感性や技量の利用であるならば,人を活かすことが不可欠である5)。これがブランド化と呼ばれるトレンドである。そして,そのトレンドが,ラインからセル,大量生産から少量多品種という生産方式の変化を生んでいる。つまり,無人化工場という目的から人と機械の協調の工場という目的の変換が国内の製造業の生き残りには不可欠である。ブランド化には人間の高度な技量を活かすことが必須であり,そこでは機械を中心としたHMIではなく,人を中心としたHMIでなければいけない。そのような観点からハンディ型HMIの現状と将来を見ていこう。

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